商品の不備(汚損、欠陥、仕様違い等)に対してお客様や取引先へ謝罪する重要なビジネス文書です。適切な対応により、顧客との信頼関係を維持し、企業の信用失墜を防ぐことができます。
書き方の基本ポイント
文書の目的と相手に応じた適切な表現
商品不備のお詫び状の4つの核心要素
- 迅速な謝罪:事実確認後24時間以内の対応
- 具体的な原因説明:推測ではなく確認済み事実のみ
- 明確な解決策提示:代替品・返金・修理等の具体的対応
- 再発防止の約束:システム改善・プロセス見直しの明示
必須記載事項の完全チェックリスト
- 発行日付(文書作成日を正確に記載)
- 宛名情報(会社名・部署名・役職・担当者名)
- 商品特定情報(商品名・型番・注文番号・数量・発送日)
- 不備の具体的内容(汚損・破損・仕様違い等)
- 謝罪の言葉(心からの謝罪表現)
- 原因説明(発生要因の簡潔な説明)
- 具体的対応策(代替品発送・返金・修理等)
- 再発防止策(システム改善・チェック体制強化)
- 連絡先情報(担当者名・電話番号・メールアドレス)
- 発行者署名(責任者の署名・押印)
敬語・謙譲語の正しい使い方
謙譲語の適切な使用例
- 「お送りいたします」(送る→お送りする→お送りいたします)
- 「ご迷惑をおかけいたします」(迷惑をかける→ご迷惑をおかけする)
- 「お詫び申し上げます」(詫びる→お詫びする→お詫び申し上げる)
避けるべき二重敬語
- ❌「お送りさせていただきます」
- ✅「お送りいたします」
具体的な記入例
【良い例】BtoB企業向け
令和6年7月15日
株式会社○○商事
資材部 部長 山田太郎様
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度は7月10日にお届けいたしました「ステンレス製パイプ(注文番号:SP-2024-0710)」
におきまして、表面に錆が発生した不良品をお送りしてしまい、ご迷惑をおかけいたしましたことを
深くお詫び申し上げます。
本件の原因は、弊社倉庫における湿度管理の不備により、保管中に錆が発生したものと判明いたしました。
つきましては、良品と交換させていただきたく、本日改めて良品を発送いたしました。
明日午前中にはお手元に届く予定でございます。
今後は倉庫の湿度管理システムを見直し、全商品の出荷前検査を徹底することで、
このような事態の再発防止に努めてまいります。
不良品につきましては、弊社にて回収いたしますので、お手数ですが着払いにて
ご返送いただけますでしょうか。
この度は多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
何卒ご寛容のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社○○製作所
営業部長 鈴木一郎
TEL: 03-1234-5678 Email: suzuki@example.com
【悪い例】避けるべき表現
❌ すみませんが、商品に問題があったみたいです
❌ 運送会社の問題かもしれません
❌ たまたま起きてしまいました
❌ 気をつけるようにします
業界別・シーン別バリエーション
【製造業】精密機器の不具合
「製造工程における品質管理体制の見直しと、
出荷前検査項目の追加により再発防止を図ります」
【食品業界】賞味期限・品質問題
「HACCP基準に基づく品質管理システムの強化と、
トレーサビリティ体制の見直しを実施いたします」
【アパレル業界】サイズ・色違い
「在庫管理システムの改修と、出荷前の複数担当者による
ダブルチェック体制を導入いたします」
【IT・電子機器】動作不良・仕様違い
「品質保証部門での検査工程を追加し、
出荷前の動作確認テストを強化いたします」
法的・実務的な留意点
法的効力と要件
関連法規
- 製造物責任法(PL法):製品の欠陥による損害賠償責任
- 民法第415条:債務不履行に基づく損害賠償
- 消費者契約法:消費者との契約における事業者の責任
- 商品先物取引法:商品の品質保証に関する規定
法的リスクの回避
- 過度な責任を認める表現は避ける
- 「全面的に弊社の責任です」等の表現は法務部確認必須
- 損害賠償に関する言及は慎重に行う
保管期間と管理方法
保管期間
- 最低保管期間:5年間(商法第19条に準拠)
- 推奨保管期間:7年間(税務上の書類保存期間に合わせる)
管理方法
- 原本とコピーの分別保管
- 電子データのバックアップ(クラウドと物理媒体の併用)
- アクセス権限の設定(担当者・管理者・閲覧者の区別)
- 定期的な保管状況の監査
関連法規や規則への準拠確認
- 個人情報保護法:顧客情報の適切な取り扱い
- 不正競争防止法:営業秘密の保護
- 公正競争規約:業界特有のルール遵守
使用タイミングと注意事項
使用すべきタイミング
✅ 即座に対応:不備発覚から24時間以内 ✅ 顧客からの指摘:クレーム受付後2時間以内 ✅ 社内発見:出荷後の自社発見時 ✅ 第三者からの通報:間接的な情報入手時
使用を避けるべきケース
❌ 事実確認が不完全:推測に基づく謝罪は危険 ❌ 法的争点が複雑:弁護士相談が必要な案件 ❌ 顧客側の過失が明白:責任所在が曖昧な場合 ❌ 保険会社との調整中:保険適用の可能性がある場合
トラブル防止のためのチェックポイント
- 事実確認の徹底
- 不備の発生原因を客観的に調査
- 関係部署からの情報収集
- 第三者機関での検証(必要に応じて)
- 責任範囲の明確化
- 自社の責任範囲を正確に把握
- 取引先・顧客との責任分担の確認
- 保険適用の可能性検討
- 対応策の実現可能性
- 代替品の在庫確認
- 修理・交換の技術的可能性
- コスト負担の社内承認
よくある失敗例とその対策
失敗例1:感情的な謝罪
- ❌「本当に申し訳ありませんでした」
- ✅「深くお詫び申し上げます」
- 対策:感情より事実に基づく謝罪
失敗例2:原因の過度な詳細説明
- ❌「担当者Aの確認ミスにより…」
- ✅「弊社の確認体制に不備があり…」
- 対策:個人特定せず組織として対応
失敗例3:曖昧な再発防止策
- ❌「今後気をつけます」
- ✅「チェック体制を○○に変更し…」
- 対策:具体的で測定可能な改善策
カスタマイズのヒント
業種・業態に応じた調整方法
【製造業】カスタマイズポイント
- 品質管理システム(ISO9001等)への言及
- 技術的な原因説明の詳細度調整
- 製造ロット全体への影響範囲確認
【小売業】カスタマイズポイント
- 店舗での確認体制強化
- 仕入先との連携体制見直し
- 顧客への迅速な情報提供体制
【サービス業】カスタマイズポイント
- サービス品質向上への取り組み
- スタッフ教育・研修の強化
- 顧客満足度向上施策の実施
社内ルールに合わせた修正ポイント
承認フロー
- 部門長承認:軽微な案件
- 役員承認:重大な品質問題
- 取締役会承認:企業イメージに関わる案件
署名・押印ルール
- 電子署名の導入状況確認
- 押印省略の可否判断
- 代理署名の権限範囲
デジタル化・電子化対応の注意点
電子文書の法的有効性
- 電子署名法に基づく署名方式
- タイムスタンプの付与
- 改ざん防止措置の実装
セキュリティ対策
- 暗号化通信の使用
- アクセスログの記録
- 情報漏洩防止策
重要な最終チェックポイント
発送前の最終確認
- 法的リスクチェック
- 過度な責任を認めていないか
- 法務部門の確認を得ているか
- 保険会社との調整は完了しているか
- 実行可能性チェック
- 約束した対応策が実現可能か
- 必要な予算・人員は確保されているか
- スケジュールは現実的か
- コミュニケーションチェック
- 相手の立場を考慮した表現か
- 誠意が伝わる内容になっているか
- 今後の関係性に配慮しているか
緊急時の対応フロー
重大案件発覚 → 即座に上司報告 → 法務・リスク管理部門連携 →
経営陣判断 → 専門家相談 → 対応方針決定 → 文書作成 → 発送
テンプレート書式なので必要に応じて文章を変更してご利用ください。
ファイル形式はWord(ワード)です。下記からダウンロードしてご利用してください。