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金銭消費貸借予約契約書とは
金銭消費貸借予約契約書は、将来的に金銭の貸し借りを行うことを事前に約束する契約書です。実際の金銭授受は行わず、借主が資金を必要とした時点で正式な貸借契約が成立する仕組みです。
通常の貸借契約との違い
項目 | 予約契約 | 通常の貸借契約 |
---|---|---|
金銭授受 | なし(予約段階) | あり(契約成立時) |
契約効力 | 将来の貸借を約束 | 即座に貸借関係成立 |
有効期限 | 設定される | 返済期限まで |
解約 | 比較的容易 | 困難(債務不履行等が必要) |
法的性質
- 予約契約:将来契約を締結する義務を負う契約
- 本契約への移行:借主の意思表示により本契約が成立
- 片務契約:主に貸主が融資義務を負う一方的契約
予約契約が活用される場面
事業資金の調達場面
設備投資の準備
- 設備購入契約前の資金確保
- 入札参加時の資金調達保証
- プロジェクト開始前の資金手当
季節変動への対応
- 繁忙期前の運転資金確保
- 仕入れ資金の事前確保
- キャッシュフロー変動への備え
個人の資金需要
住宅購入関連
- 物件決定前の資金調達準備
- つなぎ融資の代替手段
- 住宅ローン承認前の準備
教育資金
- 進学決定前の学費準備
- 留学資金の事前確保
- 専門学校等の入学前準備
緊急時の備え
医療費等の突発的支出
- 手術費用等の高額医療費
- 介護費用の急な発生
- 事故等による緊急支出
投資機会への対応
- 不動産投資の機会創出
- 株式投資の資金確保
- 事業投資の迅速な実行
予約契約の活用メリット・デメリット
メリット
借主側
- 資金需要が確定する前に調達手段を確保
- 金利等の条件を事前に固定
- 資金調達の不安を解消
- 投資機会を逃すリスクの軽減
貸主側
- 融資機会の事前確保
- 借主の信用状況を事前審査
- 計画的な資金運用が可能
- 競合他社より優位な立場確保
デメリット・リスク
借主側
- 実際に借入しなくても契約上の制約
- 他の資金調達手段の制限可能性
- 金利情勢変化時の不利益
貸主側
- 資金を拘束される可能性
- 借主の信用状況悪化リスク
- 金利上昇時の機会損失
注意すべき法的リスク
契約の拘束力
- 予約契約も法的拘束力あり
- 一方的な解約は契約違反
- 損害賠償責任の発生可能性
金融業法規制
- 反復継続する場合は貸金業登録が必要
- 個人間でも業として行う場合は規制対象
- 無登録営業は刑事罰の対象
書き方の基本ポイント
1. 契約の目的と性格の明確化
予約契約であることを明確に示すことが重要です。
記入例
金銭消費貸借予約契約書
貸主(以下「甲」という)○○○○と借主(以下「乙」という)△△△△は、
将来における金銭消費貸借について、次のとおり予約契約を締結する。
2. 契約金額と条件の設定
将来の本契約の条件を具体的に定めます。
記入例
第1条(予約の内容)
甲は乙に対し、乙が本契約第3条に定める方法により貸借の申込みをしたときは、
下記条件により金銭を貸し付けることを約束する。
貸付金額:金○○○万円
利率:年○○%
返済期限:本契約成立の日から○年後の同日
返済方法:期限一括返済(又は分割返済)
金額設定の注意点
- 上限額を明確に設定
- 利息制限法の上限以下に設定
- 返済能力を十分検討
3. 契約の有効期限
予約契約の存続期間を明確に定めます。
記入例
第2条(予約期間)
本予約契約の有効期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとする。
乙が上記期間内に第3条の申込みをしない場合、本予約契約は自動的に失効する。
期間設定の考慮事項
- 資金需要の予測可能期間
- 金融情勢の変動リスク
- 当事者の事情変更の可能性
4. 本契約成立の条件
借主がどのような方法で本契約の成立を求めるかを定めます。
記入例
第3条(本契約の成立)
乙が甲に対し書面により貸借の申込みをし、甲がこれを承諾したときに、
第1条に定める条件による金銭消費貸借契約が成立する。
申込みの方法:
(1) 書面による申込み(郵送可)
(2) 申込み理由の具体的記載
(3) 希望する貸付実行日の明記
成立条件の設計
- 書面主義の採用(口頭では不十分)
- 貸主の承諾権を留保
- 申込みから実行までの期間設定
5. 予約契約の解除条件
どのような場合に予約契約が解除されるかを定めます。
記入例
第4条(予約契約の解除)
甲は、乙に次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合、
本予約契約を解除することができる。
(1) 支払停止、破産手続開始の申立て等の事実が発生したとき
(2) 手形、小切手が不渡りになったとき
(3) 信用状態が著しく悪化したとき
(4) 本予約契約の条項に違反したとき
(5) その他甲が不適当と認めたとき
6. 担保・保証の取扱い
担保設定や保証人の要否を明確化します。
無担保の場合
第5条(担保)
本予約契約および将来成立する本契約については、担保を付さないものとする。
担保設定の場合
第5条(担保の設定)
本契約成立時に、乙は甲のために下記担保を設定するものとする。
担保の種類:○○
担保の内容:○○
担保設定の時期:本契約成立と同時
実務上の重要な留意点
審査・与信管理
事前審査の実施
- 借主の信用情報調査
- 収入・資産状況の確認
- 返済能力の総合判断
- 資金使途の妥当性確認
継続的な与信管理
- 定期的な信用状況確認
- 財務状況の変化把握
- 解除事由該当性の監視
金利設定の考慮事項
基準金利の設定
- 市場金利の動向
- 信用リスクの程度
- 利息制限法の上限遵守
- 同業他社との競争力
金利変動への対応
第○条(金利の調整)
本予約契約締結後、経済情勢の著しい変動等により、
契約時の金利が著しく不適当となった場合は、
甲乙協議の上、金利を調整することができる。
税務上の取扱い
予約段階での課税関係
- 予約時は課税関係なし
- 本契約成立時から課税開始
- 利息収入は雑所得
印紙税の取扱い
- 予約契約書:第7号文書(200円)
- 本契約書:第1号文書(金額に応じた税額)
具体的な条項例と活用場面
パターン1:事業資金の調達予約
第1条(予約の内容)
甲は乙が経営する○○事業の運転資金として、下記条件により
金銭を貸し付けることを約束する。
貸付金額:500万円以内
利率:年12%
返済期限:貸付実行日から2年後
返済方法:毎月元利均等分割返済
資金使途:○○事業の運転資金に限定
第2条(実行条件)
甲の貸付実行は、以下の条件をすべて満たすことを前提とする。
(1) 乙の財務状況に重大な変化がないこと
(2) 事業計画書の提出
(3) 必要に応じて担保・保証の提供
パターン2:住宅購入資金の調達予約
第1条(予約の内容)
甲は乙の住宅購入資金として、下記条件により金銭を貸し付けることを約束する。
貸付金額:1,000万円以内
利率:年3%(固定金利)
返済期限:貸付実行日から10年後
返済方法:毎月元利均等分割返済
資金使途:居住用不動産の購入資金
第2条(実行条件)
甲の貸付実行は、以下の条件をすべて満たすことを前提とする。
(1) 購入物件に第一順位の抵当権設定
(2) 火災保険への加入(甲を質権者とする)
(3) 収入証明書の提出
パターン3:緊急資金の調達予約
第1条(予約の内容)
甲は乙に緊急事態が発生した場合の資金として、下記条件により
金銭を貸し付けることを約束する。
貸付金額:200万円以内
利率:年15%
返済期限:貸付実行日から1年後
返済方法:期限一括返済
資金使途:緊急医療費、災害復旧費等
第2条(緊急事態の定義)
本契約における緊急事態とは、以下の事由をいう。
(1) 乙又は家族の重篤な疾病・怪我
(2) 自然災害による損害
(3) その他甲が緊急と認める事由
よくあるトラブルと対策
ケース1:借主が申込みを拒否された場合
問題:予約契約があるのに貸付実行を拒否された 原因:
- 信用状況の悪化
- 実行条件の不充足
- 資金使途の変更
対策:
- 実行条件を具体的かつ客観的に設定
- 定期的な信用状況確認
- 拒否理由の明確化
ケース2:金利情勢の変化による紛争
問題:契約後の金利上昇で貸主が実行を渋る 原因:
- 金利変動条項の不備
- 市場金利との乖離拡大
対策:
- 金利調整条項の設定
- 基準金利との連動制の導入
- 情勢変更の協議条項
ケース3:予約期間の解釈紛争
問題:予約期間満了の判断で紛争 原因:
- 期間の起算点不明確
- 申込み期限の曖昧性
対策:
- 明確な期間設定
- 申込み期限の具体的記載
- 期間延長の可否を事前合意
ケース4:資金使途違反による解除
問題:約定と異なる目的で資金使用 原因:
- 資金使途の監視不備
- 用途変更の事前相談なし
対策:
- 資金使途の具体的限定
- 使用状況の報告義務設定
- 違反時の措置明確化
チェックリスト
予約契約締結前
- 借主の信用状況を十分調査したか
- 返済能力を慎重に審査したか
- 資金使途の妥当性を確認したか
- 金利水準の適正性を検討したか
- 担保・保証の必要性を判断したか
- 予約期間を適切に設定したか
契約書作成時
- 予約契約であることを明記したか
- 貸付条件を具体的に規定したか
- 本契約成立の手続きを明確化したか
- 解除事由を適切に設定したか
- 金利変動への対応を検討したか
- 収入印紙を正しく貼付したか
契約期間中の管理
- 借主の信用状況を定期確認しているか
- 市場金利の動向を把握しているか
- 申込み時の実行条件を整備したか
- 必要書類の準備を完了したか
- 解除事由の該当性を監視しているか
業種別・場面別のカスタマイズ
不動産業向け
特徴
- 物件取得資金の機動的調達
- 短期間での資金回転
- 担保評価の変動リスク
追加条項例
第○条(物件の特定)
本予約契約による資金は、以下の条件を満たす不動産の
取得資金に限定する。
(1) 所在地:○○市内
(2) 種別:住宅用地又は住宅
(3) 価格:○○万円以上○○万円以下
(4) 法的制約:建築基準法等に適合
製造業向け
特徴
- 設備投資資金の確保
- 季節変動への対応
- 在庫資金の調達
追加条項例
第○条(設備投資計画の提出)
乙は申込み時に、以下の書類を提出するものとする。
(1) 設備投資計画書
(2) 投資効果の試算書
(3) 資金調達・返済計画書
(4) 設備の仕様書・見積書
個人事業主向け
特徴
- 事業規模に応じた柔軟な設定
- 個人保証の問題
- 事業と個人の区分
追加条項例
第○条(事業継続の条件)
乙が以下の事由に該当した場合、甲は本予約契約を解除できる。
(1) 事業の廃止又は休止
(2) 営業許可の取消し・停止
(3) 事業内容の重大な変更
(4) 主要取引先との契約解除
デジタル化・効率化の推進
電子契約システムの活用
予約契約に適したサービス
- クラウドサイン:契約期間管理機能が充実
- DocuSign:海外との取引にも対応
- Adobe Sign:PDF連携が強力
電子化のメリット
- 印紙税の節約
- 契約期間の自動管理
- 申込み手続きの迅速化
- 書類保管の効率化
金銭消費貸借予約契約書は、将来的な貸借関係の合意を事前に確保するための重要な書類であり、当事者間の約束を法的に裏付ける役割を果たします。
テンプレート書式なので必要に応じて文章を変更してご利用ください。
ファイル形式はWord(ワード)です。
下記から選んでダウンロードしてご利用してください。
- 金銭消費貸借予約契約書01:基本型
特徴
- シンプルな予約契約
- 個人間取引に適している
- 理解しやすい構成
適用場面
- 小額の資金調達
- 短期間の予約
- 信頼関係のある当事者間
- 金銭消費貸借予約契約書02:詳細型
特徴
- 包括的な条項設定
- 事業取引に対応
- リスク管理が充実
適用場面
- 高額な資金調達
- 長期間の予約
- 事業資金の調達
選択の指針
金額による選択
- 500万円未満:テンプレート01
- 500万円以上:テンプレート02
期間による選択
- 1年以内:テンプレート01
- 1年超:テンプレート02
関係性による選択
- 個人間:テンプレート01
- 事業関係:テンプレート02