粗悪品の納入は企業の根幹である品質管理体制に関わる重大な問題です。適切で迅速な対応により、取引先との信頼関係を回復し、品質管理システムの信頼性を再構築することが可能です。
書き方の基本ポイント
文書の目的と相手に応じた適切な表現
粗悪品お詫び状の6つの核心要素
- 緊急謝罪:粗悪品判明後6時間以内の対応
- 品質問題の詳細説明:何がどの程度問題だったかの具体的説明
- 即座の回収・交換対応:不良品の迅速な回収と良品との交換
- 根本原因の究明:品質管理プロセスのどこに問題があったか
- 包括的改善策:品質管理システム全体の見直しと強化
- 品質保証の再構築:今後の品質保証体制の明確化
必須記載事項の完全チェックリスト
- 発行日付(お詫び状作成日)
- 宛名情報(会社名・部署名・役職・担当者名)
- 問題商品の特定情報(商品名・型番・ロット番号・納入日・数量)
- 粗悪品の具体的内容(品質基準からの逸脱内容)
- 品質検査結果(具体的な検査数値・基準値との比較)
- 謝罪の言葉(心からの謝罪表現)
- 根本原因の説明(品質管理プロセスの問題点)
- 即座の対応策(回収・交換・返金等の具体的対応)
- 包括的改善策(品質管理システムの抜本的見直し)
- 品質保証の再約束(今後の品質保証体制)
- 損害補償の方針(必要に応じて)
- 連絡先情報(品質管理責任者の直通連絡先)
- 責任者署名(品質管理責任者・役員等の署名)
敬語・謙譲語の正しい使い方
品質問題で使用する適切な敬語
- 「納入させていただきました」→「納入いたしました」
- 「不良品を作ってしまいました」→「品質基準を満たさない製品を製造いたしました」
- 「チェックが甘かったです」→「品質管理が不徹底でございました」
- 「すぐに取り替えます」→「速やかに良品と交換させていただきます」
品質問題特有の専門用語と説明
- 粗悪品:品質基準を満たさない製品
- 品質管理:QC(Quality Control)- 品質を一定水準に保つ活動
- 品質保証:QA(Quality Assurance)- 品質を保証するシステム
- トレーサビリティ:製品の履歴を追跡できる仕組み
具体的な記入例
【良い例1】製造業における機能不良
令和6年7月15日
株式会社○○エンジニアリング
品質管理部 部長 田中太郎様
拝啓 猛暑の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度は7月10日に納入いたしました「精密ベアリング(型番:PB-2024-A型、
ロット番号:L240710-001、数量:500個)」におきまして、品質基準を大きく下回る
粗悪品を納入してしまい、貴社の生産工程に重大な支障をきたしましたことを、
心より深くお詫び申し上げます。
【品質問題の詳細】
・規定精度:±0.01mm → 実測値:±0.05mm(基準の5倍の誤差)
・回転精度:±0.5° → 実測値:±3.0°(基準の6倍の誤差)
・表面粗さ:Ra1.6 → 実測値:Ra4.2(基準の2.6倍)
【根本原因】
弊社の品質管理調査の結果、以下の問題が判明いたしました:
1. 製造ライン№3の精密加工機の校正不備
2. 品質検査工程での抜き取り検査率の不足(5%→本来20%必要)
3. 検査員の技能認定更新漏れ
【緊急対応】
1. 本日中に全数回収いたします(回収費用は弊社負担)
2. 良品500個を7月17日午前中までに納入いたします
3. 貴社での検査立会いを実施いたします
4. 生産遅延による損失補償についてご相談させていただきます
【抜本的改善策】
1. 全製造ラインの精密機器を一斉校正(7月20日完了予定)
2. 品質検査体制の強化
- 抜き取り検査率を20%→30%に引き上げ
- 全数検査対象品目の拡大
- AI画像検査システムの導入
3. 品質管理責任者の交代と組織体制の見直し
4. ISO9001認証機関による臨時監査の受け入れ
今後は二度とこのような事態を発生させないよう、品質管理システムを根本から
見直し、貴社にご安心いただける品質保証体制を再構築いたします。
この度は多大なるご迷惑とご損害をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
何卒ご寛容のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社△△精密工業
代表取締役社長 山田一郎
品質管理部長 佐藤花子
TEL: 03-1234-5678(直通) Email: quality@example.com
【良い例2】食品業界における品質問題
令和6年7月15日
株式会社◇◇フードサービス
仕入部 課長 鈴木次郎様
拝啓 盛夏の候、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
この度は、7月12日に納入いたしました「冷凍野菜ミックス(商品コード:FV-240712、
ロット:L240710-A、数量:100ケース)」におきまして、HACCP基準を満たさない
品質の製品を納入してしまい、貴社の食品安全管理にご迷惑をおかけいたしましたことを
深くお詫び申し上げます。
【品質問題の内容】
・細菌検査結果:一般生菌数 5.2×10⁵個/g(基準:1.0×10⁴個/g以下)
・異物混入:プラスチック片3mm×2mm(1ケース内で発見)
・色調:変色が認められる野菜が全体の15%(基準:5%以下)
【原因究明結果】
1. 原料野菜の受入検査体制の不備
2. 冷凍処理前の予冷工程での温度管理不良
3. 包装ラインでの異物検査機器の感度調整不足
4. 作業員の衛生管理教育不足
【即座の対応】
1. 該当ロット全数の即座回収(本日17時完了予定)
2. HACCP基準適合品への無償交換(7月16日午前納入)
3. 第三者検査機関による品質証明書添付
4. 貴社での受入検査への立会い
【根本的改善策】
1. HACCP管理システムの全面見直し
- CCP(重要管理点)の再設定
- モニタリング頻度の倍増
- 記録管理システムのデジタル化
2. 設備・機器の総点検と更新
- 金属検出機の感度向上
- X線異物検査機の新規導入
- 温度管理システムの高精度化
3. 従業員教育の強化
- 食品安全責任者資格の取得推進
- 月次衛生管理研修の実施
- 内部監査員の育成
今後は食品安全を最優先とした品質管理体制を構築し、
安心・安全な食品のみをお届けすることをお約束いたします。
貴社ならびにお客様にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。
今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社□□食品
代表取締役 高橋三郎
品質保証部長 伊藤美佳
TEL: 06-9876-5432 Email: qa@example.co.jp
【悪い例】避けるべき表現
❌ たまたま不良品が混入してしまいました
❌ 工場の調子が悪くて...
❌ 新人のミスです
❌ 忙しい時期で確認が甘くなりました
❌ 運が悪かったです
❌ システムの問題かもしれません
業界別・シーン別バリエーション
【自動車部品】安全性に関わる不良
「自動車安全基準(JASO、ISO/TS16949)に基づく品質管理システムの
全面的な見直しと、第三者認証機関による監査受け入れを実施いたします」
【医療機器】機能・精度の問題
「薬機法および医療機器QMSに準拠した品質管理体制の強化と、
PMDAガイドラインに基づく品質システムの再構築を行います」
【化学製品】成分・純度の問題
「GMP基準に基づく製造工程管理の徹底と、
分析試験方法の妥当性検証を第三者機関で実施いたします」
【繊維製品】強度・外観の問題
「JIS規格準拠の品質試験体制を強化し、
全工程でのトレーサビリティシステムを導入いたします」
法的・実務的な留意点
法的効力と要件
関連法規
- 製造物責任法(PL法):製品の欠陥による損害賠償責任
- 品質管理法関連:JIS規格、ISO規格等の品質基準
- 業界特有法規:
- 食品衛生法(食品業界)
- 薬機法(医療機器・化粧品)
- 建築基準法(建材業界)
- 道路運送車両法(自動車部品)
法的リスクの管理
- 損害賠償責任の範囲確定
- 製品回収に伴うコスト負担
- 第三者への被害拡大防止
- 行政処分・業務停止の回避
保管期間と管理方法
保管期間
- 製造物責任法:10年間(損害賠償請求権の除斥期間)
- 品質管理記録:業界基準に応じて7~30年
- トレーサビリティ記録:製品寿命期間+α
管理方法
- 品質問題対応記録の一元管理
- 改善措置の実施状況記録
- 顧客対応履歴の詳細保管
- 第三者検査結果の保管
業界特有の規制対応
食品業界
- 食品衛生法に基づく報告義務
- HACCPシステムの適切な運用
- 食品リコール制度への対応
医療機器業界
- PMDA(医薬品医療機器総合機構)への報告
- 医療機器不具合報告制度
- QMS(品質マネジメントシステム)の維持
使用タイミングと注意事項
使用すべきタイミング
✅ 社内検出時:品質問題発覚後6時間以内 ✅ 顧客指摘時:クレーム受付後3時間以内 ✅ 第三者発見時:外部指摘後即座 ✅ 行政指導時:当局からの指摘後即座
使用を避けるべきケース
❌ 原因調査が不完全:推測に基づく説明は危険 ❌ 改善策が未確定:実現不可能な約束は禁物 ❌ 法的責任が複雑:弁護士相談が必要な案件 ❌ 他社責任の可能性:サプライチェーン上の責任分担が不明
トラブル防止のためのチェックポイント
- 品質問題の正確な把握
- 不良内容の客観的データ収集
- 品質基準との具体的比較
- 影響範囲の正確な特定
- 根本原因の徹底究明
- 5Why分析による原因深掘り
- フィッシュボーン図による要因分析
- 類似問題の過去事例調査
- 改善策の実現可能性確認
- 技術的実現可能性の検証
- 必要コスト・期間の算定
- 社内承認の事前取得
よくある失敗例とその対策
失敗例1:技術的説明の過度な詳細化
- ❌「熱処理温度が3.5℃低く、結晶構造に…」
- ✅「熱処理工程の管理不足により強度不足が発生」
- 対策:専門用語は平易な言葉で補足説明
失敗例2:責任転嫁的な表現
- ❌「仕入先からの材料に問題があり…」
- ✅「弊社の材料検査体制に不備があり…」
- 対策:自社責任として受け止める姿勢
失敗例3:曖昧な改善約束
- ❌「今後気をつけます」
- ✅「○月○日までに△△システムを導入し…」
- 対策:具体的で測定可能な改善策
カスタマイズのヒント
業種・業態に応じた調整方法
【精密機械製造業】
- 精度・公差に関する技術的説明
- ISO9001等の品質管理システム言及
- 測定機器の校正状況説明
【化学・素材産業】
- 成分分析結果の詳細データ
- 製造プロセスの化学的説明
- 環境負荷への配慮表明
【食品製造業】
- 食品安全基準への準拠確認
- HACCP管理システムの運用状況
- トレーサビリティの確保
重要な最終チェックポイント
発送前の最終確認
- 技術的正確性の確認
- 品質データの正確性
- 技術的説明の妥当性
- 改善策の実現可能性
- 法的リスクの確認
- 過度な責任負担の回避
- 製造物責任法への対応
- 業界法規制への準拠
- ステークホルダーへの配慮
- 顧客への影響最小化
- 社内関係部署との調整
- 取引先への情報共有
テンプレート書式なので必要に応じて文章を変更してご利用ください。
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