お客様や取引先に対して、注文品の納期遅延について謝罪の意を表す重要なビジネス文書です。適切な対応により信頼関係の維持・回復を図り、今後の取引継続につなげることができます。会員登録不要・無料ですぐにテンプレートをダウンロードしてご利用できます。
書き方の基本ポイント
必須記載事項
- 遅延の具体的内容:商品名、注文番号、当初の納期、遅延日数を明確に記載
- 遅延原因の詳細:具体的で理解しやすい原因説明(曖昧な表現は避ける)
- 新しい納期:確実に履行できる現実的な納期を提示
- 遅延による影響への配慮:相手方の業務やスケジュールへの影響を認識していることを示す
- 再発防止策:具体的で実効性のある改善策を明示
- 緊急連絡先:担当者の直通電話番号やメールアドレス
文書の目的に応じた表現の使い分け
初回遅延の場合
- 率直な謝罪と原因説明に重点
- 信頼回復への意志を強調
- 今後の品質向上への取り組みを表明
再発した遅延の場合
- より深刻な謝罪表現を使用
- 根本的な改善策の提示が必須
- 経営陣からの謝罪も検討
軽微な遅延の場合
- 簡潔で要点を絞った内容
- 迅速な対応姿勢を強調
重大な遅延の場合
- 詳細な原因分析と対策
- 損害への配慮を明示
- 必要に応じて補償についても言及
敬語・謙譲語の正しい使い方
- 基本形:「遅れており申し訳ございません」
- より丁寧:「遅延いたしまして、深くお詫び申し上げます」
- 最も丁寧:「納期を遅延いたしましたこと、心よりお詫び申し上げます」
避けるべき表現
- 「遅れてしまい」→「遅延いたしまして」
- 「すみません」→「申し訳ございません」
- 「なるべく早く」→「○月○日までには」
具体的な記入例
良い例(製造業向け – 原材料調達遅延)
件名:【重要】ステンレス製品納期遅延に関するお詫び
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、貴社にてご注文いただきました下記製品につきまして、
納期に遅延が生じますことが判明いたしました。
【遅延詳細】
・商品名:ステンレス加工部品 SUS304-A型
・注文番号:ABC-2025-0001
・注文数量:500個
・当初納期:令和7年7月20日
・新納期:令和7年7月30日(10日間の遅延)
【遅延原因】
主要原材料であるステンレス鋼材の調達において、
海外サプライヤーでの品質検査工程に予想以上の時間を要したため、
当社への入荷が7月15日から7月25日に変更となりました。
【対応状況と新納期の根拠】
・7月25日:原材料入荷予定(確約済み)
・7月26日-29日:加工・検査工程(通常通り)
・7月30日:検査完了・出荷予定
【再発防止策】
1. 代替サプライヤー2社との契約締結(8月末まで)
2. 安全在庫の確保(通常の1.5倍に増量)
3. 週次での調達状況確認体制の構築
この度は貴社の生産計画にご迷惑をおかけし、
誠に申し訳ございません。何卒ご理解を賜りますよう
お願い申し上げます。
敬具
悪い例
納期が遅れます。すみません。
理由は原材料が遅れたからです。
なるべく早く出荷します。
業界・シーン別バリエーション
IT・システム開発業向け
【遅延原因】
開発工程において、お客様からの追加要件により
設計変更が必要となり、テスト工程が延長されたため
【対応策】
・追加開発チーム3名の投入
・並行テスト体制の構築
・24時間体制での進捗管理
建設・工事業向け
【遅延原因】
連日の降雨により、基礎工事の工程に遅れが生じ、
安全確保のため作業を中断せざるを得なかったため
【対応策】
・天候回復後の工程短縮計画の実施
・作業班の増員による遅れの回復
・代替工法の検討・実施
小売・流通業向け
【遅延原因】
配送センターでのシステム障害により、
出荷業務に遅延が発生したため
【対応策】
・緊急時用バックアップシステムの稼働
・手作業による優先出荷の実施
・配送ルートの最適化による時間短縮
法的・実務的な留意点
法的効力と契約上の注意事項
- 債務不履行の認定:遅延を認めることで法的責任が発生する可能性
- 損害賠償責任:契約条項に基づく賠償責任の範囲を確認
- 免責条項の確認:不可抗力や免責事項に該当するかの検討
- 時効の起算点:遅延を認めた日からの損害賠償請求権の時効開始
契約書との整合性確認
- 遅延損害金:契約書に記載された遅延損害金の規定
- 納期変更手続き:正式な納期変更に必要な手続きの確認
- 解除権の行使:相手方の契約解除権行使の可能性
- 代替履行:代替品や代替サービスでの履行可能性
保管期間と管理方法
- 保管期間:契約関連書類として最低10年間保管(商法の規定)
- 管理方法:原本は法務部門、コピーは営業・製造部門で保管
- 電子データ化:改ざん防止のためのタイムスタンプ付与
- アクセス制限:機密情報として適切なアクセス管理
関連法規への準拠確認
- 下請代金支払遅延等防止法:下請取引での納期遅延の扱い
- 製造物責任法:製品の品質や安全性に関わる遅延の場合
- 独占禁止法:優越的地位の濫用に関する注意事項
- 民法改正:2020年施行の改正民法での債務不履行規定
使用タイミングと注意事項
発送すべきタイミング(優先度順)
🚨 即座(24時間以内)
- 遅延が確定した時点
- 相手方の業務に重大な影響を与える可能性がある場合
- 契約で事前通知義務が定められている場合
- 公共工事や官公庁案件での遅延
⚠️ 迅速(48時間以内)
- 遅延の可能性が高い時点
- 軽微な遅延だが信頼関係を重視する取引先
- 初回取引での遅延
📋 計画的(72時間以内)
- 内部調整が必要な複雑な遅延
- 複数の関係者との調整が必要な場合
- 損害の算定や補償案の検討が必要な場合
発送前の社内確認プロセス
- 事実確認:遅延の原因・期間・影響範囲の正確な把握
- 責任の所在:社内・社外の責任分担の明確化
- 対応策の検討:現実的で実効性のある改善策の立案
- 承認取得:営業責任者・品質管理責任者・法務担当者の承認
- 関係者への通知:社内関係部署への情報共有
よくある失敗例と対策
失敗例1:楽観的な納期を提示して再度遅延
- 原因:希望的観測に基づく納期設定
- 対策:最悪ケースを想定した現実的な納期提示
- チェック方法:複数部署での納期妥当性の検証
失敗例2:原因説明が言い訳に聞こえる
- 原因:責任転嫁的な表現や他責的な説明
- 対策:自社の管理責任を認めた上での原因説明
- 改善表現:「管理不足により」「確認が不十分で」
失敗例3:抽象的な再発防止策
- 原因:「気をつけます」「注意します」等の精神論
- 対策:具体的な手順・体制・システムの改善策
- 具体例:「毎週金曜日に進捗確認会議を実施」
失敗例4:相手方への影響を軽視
- 原因:自社目線での状況判断
- 対策:相手方の立場に立った影響分析
- 配慮例:「貴社の生産計画への影響」「販売機会の損失」
カスタマイズのヒント
業種別調整ポイント
製造業
- 生産ライン停止リスクへの言及
- 代替品・部分納品の可能性提示
- 品質管理体制の見直し状況
建設業
- 工期全体への影響範囲
- 天候・資材調達の外的要因考慮
- 安全性確保の優先順位
IT・システム業
- システム影響範囲の明確化
- データ移行・テスト工程の詳細
- 運用開始への影響とフォロー体制
小売・サービス業
- 顧客への影響とフォロー体制
- 代替商品・サービスの提案
- 営業機会損失への配慮
緊急時対応チェックリスト
遅延発覚時の初動対応(30分以内)
□ 遅延の事実確認と影響範囲の把握
□ 直属の上司への第一報
□ 顧客への電話連絡(概要説明)
□ 関係部署への緊急連絡
□ 応急対応策の検討開始
詳細調査・対応策検討(2時間以内)
□ 遅延原因の詳細調査
□ 新納期の現実的な見積もり
□ 代替案・部分納品の可能性検討
□ 損害影響の概算
□ 再発防止策の概要検討
文書作成前の確認(4時間以内)
□ 社内関係者からの承認取得
□ 法務・契約条項の確認
□ 顧客の事前了解の取得
□ 競合他社への影響確認
□ 広報・PR面でのリスク評価
文書送付・フォロー(24時間以内)
□ お詫び状の作成・校正
□ 正式な送付と受領確認
□ 社内関係者への共有
□ 顧客からの問い合わせ対応準備
□ 進捗管理体制の構築
中長期フォロー
□ 週次での進捗報告
□ 新納期の確実な履行
□ 改善策の実施状況確認
□ 顧客満足度の回復確認
□ 類似案件での再発防止効果確認
よくある質問(FAQ)
Q1: 遅延の可能性があるが、まだ確定していない場合は?
A1: 可能性が高い場合は事前に相談として連絡し、確定次第正式な遅延通知を行う。早期の情報共有が信頼関係維持につながります。
Q2: 相手方にも一部責任がある場合の書き方は?
A2: まず自社の管理責任を認めた上で、客観的事実として相手方要因も説明。責任転嫁にならないよう注意深い表現を使用。
Q3: 複数の商品で同時に遅延が発生した場合は?
A3: 商品ごとに詳細を記載し、全体的な原因と個別対応を明確に区分。優先順位付けと段階的な納品計画を提示。
Q4: 遅延損害金の支払いについて言及すべきか?
A4: 契約条項に基づく場合は言及が必要。ただし、具体的な金額や支払い方法は別途協議として、お詫び状では概要に留める。
テンプレート書式なので必要に応じて文章を変更してご利用ください。ファイル形式はWord(ワード)です。下記からダウンロードしてご利用ください。
重要な注意事項:納期遅延は顧客の事業計画に重大な影響を与える可能性があります。お詫び状の送付と並行して、電話での直接謝罪、必要に応じた訪問謝罪、代替案の提示など、積極的な顧客フォローを行ってください。また、同じ顧客で再度遅延が発生した場合、取引関係の継続自体が困難になる可能性があるため、根本的な業務プロセス改善が不可欠です。