注文取消しは取引先の生産計画や在庫管理に重大な影響を与える可能性があります。適切で迅速な対応により、取引関係への悪影響を最小限に抑え、今後の信頼関係を維持することが重要です。
書き方の基本ポイント
文書の目的と相手に応じた適切な表現
注文取消しお詫び状の6つの核心要素
- 緊急連絡:取消し決定後、電話での即座連絡(30分以内)
- 正式な書面通知:電話連絡後24時間以内の正式文書
- 明確な取消し理由:やむを得ない事情の客観的説明
- 損害への適切な対応:発生損害の補償・負担
- 関係継続への意思:今後の取引継続への希望表明
- 再発防止の誓約:発注管理体制の改善約束
必須記載事項の完全チェックリスト
- 発行日付(お詫び状作成日)
- 宛名情報(会社名・部署名・役職・担当者名)
- 取消対象注文の特定(注文番号・注文日・商品名・数量・金額)
- 取消し決定日時(いつ取消しを決定したか)
- 謝罪の言葉(心からの謝罪表現)
- 取消し理由の説明(やむを得ない事情の詳細)
- 事前連絡の状況(電話連絡の実施確認)
- 損害補償の方針(キャンセル料・実費等の負担)
- 進行中作業の処理(製造中止・在庫処分等の対応)
- 今後の取引意向(関係継続への希望)
- 再発防止策(発注管理の改善策)
- 連絡先情報(担当者の直通連絡先)
- 責任者署名(発注責任者・役員等の署名)
敬語・謙譲語の正しい使い方
注文取消しで使用する適切な敬語
- 「注文をキャンセルします」→「ご注文を取り消しさせていただきます」
- 「都合が悪くなりました」→「やむを得ない事情が生じました」
- 「迷惑をかけます」→「ご迷惑をおかけいたします」
- 「損害を払います」→「損害を補償させていただきます」
注文取消し特有の用語と説明
- キャンセル料:注文取消しに伴い発生する費用
- 違約金:契約違反により支払う損害賠償金
- 仕掛品:製造途中の商品・作業進行中の案件
- 機会損失:注文取消しにより失われる利益
具体的な記入例
【良い例1】経営方針変更による取消し
令和6年7月15日
株式会社○○製作所
営業部 部長 田中太郎様
拝啓 盛夏の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、先般6月20日付けでご発注させていただきました下記の件につきまして、
誠に勝手ながら注文を取り消しさせていただきたく、
深くお詫び申し上げます。
【取消し対象注文の詳細】
・注文番号:PO-240620-001
・注文日:令和6年6月20日
・商品名:カスタム精密部品 A型
・数量:500個
・単価:¥25,000
・総額:¥12,500,000(税込)
・納期:令和6年8月31日
【取消しの理由】
この度の注文取消しは、弊社の主要プロジェクトが予期せぬ事情により
中止となったことによるものです。具体的には、発注元のお客様より
プロジェクト全体の見直し指示があり、該当製品の需要がなくなりました。
この事態は7月12日に発生し、翌13日に弊社にて緊急役員会議を開催、
やむを得ず注文取消しの決定に至りました。
【事前連絡について】
昨日(7月14日)午後3時に、貴社営業部の田中部長様に直接お電話にて
取消しの件をご連絡させていただきました。お忙しい中、
ご対応いただきありがとうございました。
【損害補償について】
今回の注文取消しに伴い貴社に発生いたします損害につきましては、
以下の通り補償させていただきます:
1. 設計・開発費用:実費全額(¥800,000)
2. 材料調達費用:既発注分全額(¥2,100,000)
3. 仕掛品処理費用:実費全額(見積もり中)
4. 機会損失補償:売上の10%(¥1,250,000)
合計補償予定額:¥4,150,000+仕掛品処理費用
詳細につきましては、改めて貴社ご担当者様とお打ち合わせの上、
適正な金額を算定させていただきます。
【今後の対応】
現在製造途中の仕掛品につきましては、以下のいずれかでご対応いただけれ
ば幸いです:
1. 弊社にて買い取り(仕掛状態での評価額)
2. 材料レベルでの買い取り
3. 他用途への転用可能性の検討
【今後の取引について】
この度は弊社の都合により多大なるご迷惑をおかけいたしますが、
今後とも末永くお取引いただけますよう、お願い申し上げます。
近日中に改めてご挨拶にお伺いさせていただきます。
【再発防止策】
今後このような事態を防ぐため、以下の改善策を実施いたします:
1. 発注前のプロジェクト安定性確認の徹底
2. 発注元との契約条件見直し(取消しリスクの明確化)
3. 発注承認プロセスの厳格化
4. 定期的なプロジェクト状況の見直し体制構築
この度は弊社の都合により、貴社の生産計画に重大な支障をきたし、
誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げますとともに、
何卒ご寛容のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社△△システム
代表取締役社長 山田一郎
調達部長 佐藤花子
TEL: 03-1234-5678 Email: sato@example.com
印
【良い例2】資金繰り悪化による取消し
令和6年7月15日
有限会社◇◇商事
代表取締役 鈴木次郎様
拝啓 猛暑の候、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
この度は、7月5日付けでご発注させていただきました商品につきまして、
弊社の事情により誠に勝手ながら注文を取り消しさせていただきたく、
深くお詫び申し上げます。
【取消し対象注文】
・注文書番号:Order-240705-B
・注文日:令和6年7月5日
・商品:事務用品一式(詳細は別紙注文書記載)
・総額:¥850,000(税込)
・希望納期:令和6年7月25日
【取消しの経緯】
この度の注文取消しは、弊社の資金繰りに予想以上の困難が生じたことが
原因でございます。大口売掛金の回収遅延により、一時的に支払い能力に
支障をきたす状況となりました。
【事前連絡の実施】
本日午前10時に、鈴木社長様に直接お電話でご連絡いたしましたが、
ご不在のため、営業課の高橋様にお伝えいただくようお願いいたしました。
【損害への対応】
注文取消しに伴う貴社の損害につきましては、以下の通り対応いたします:
1. 既に手配済みの商品:弊社にて買い取り
2. 事務手続き費用:実費をお支払い
3. キャンセル料:貴社規定に従い適正にお支払い
具体的な金額につきましては、改めてご相談させていただければと存じます。
【今後について】
資金繰りの目処が立ち次第(8月下旬予定)、改めてご注文させて
いただければと考えております。その際は事前にご相談いたします。
【改善策】
今後このような事態を防ぐため:
1. 月次資金繰り計画の精度向上
2. 発注前の資金確保確認の徹底
3. 緊急時の資金調達手段の確保
長年にわたりお取引いただいている貴社に、このようなご迷惑をおかけし、
誠に申し訳ございません。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社□□商店
代表取締役 高橋三郎
TEL: 06-9876-5432
【良い例3】仕様変更による取消し
令和6年7月15日
株式会社●●テック
開発部 課長 伊藤美佳様
拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、6月25日付けでご発注させていただきました「システム開発業務」
につきまして、仕様の大幅な変更が必要となり、現契約での継続が
困難となりましたため、一旦注文を取り消しさせていただきたく、
深くお詫び申し上げます。
【取消し対象プロジェクト】
・案件名:顧客管理システム開発
・契約番号:DEV-240625-CRM
・契約日:令和6年6月25日
・契約金額:¥15,000,000(税込)
・開発期間:6ヶ月間
・進捗状況:要件定義フェーズ(全体の15%完了)
【取消しの理由】
弊社の事業戦略見直しにより、システムに求める要件が大幅に変更となり、
当初仕様での開発継続では事業目的を達成できない状況となりました。
【既存作業への対応】
これまでに実施していただいた作業に対しては、以下の通り対応いたします:
1. 要件定義作業:完了分の費用全額お支払い(¥2,250,000)
2. 設計準備作業:実工数分の費用お支払い(¥450,000)
3. プロジェクト管理費用:実費分お支払い(¥300,000)
合計:¥3,000,000
【今後の可能性について】
新仕様での開発については、要件が確定次第(8月予定)、
改めてご提案をお願いしたく存じます。
この度は開発着手直後の取消しとなり、誠に申し訳ございません。
何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
敬具
株式会社▲▲コーポレーション
情報システム部長 中村太郎
【悪い例】避けるべき表現
❌ お客様の都合で仕方なく
❌ 予算が足りなくなったので
❌ 他にいい業者が見つかったので
❌ 上司に反対されたので
❌ やっぱり必要なくなりました
❌ 損害は最小限に抑えてください
業界別・シーン別バリエーション
【製造業】カスタム製品の取消し
「既に着手いただいた金型製作費用および設計変更費用については、
全額弊社にて負担させていただきます」
【建設業】工事契約の取消し
「建設業法に基づく適正な手続きにより、着手金および準備費用を
お支払いいたします」
【IT業】システム開発の取消し
「開発途中での取消しにより、貴社の技術者の稼働計画に影響を与え、
深くお詫び申し上げます」
【小売業】大口商品注文の取消し
「既に仕入れ手配をいただいた商品については、弊社にて買い取りまたは
他の販路への転用にご協力いたします」
法的・実務的な留意点
法的効力と要件
関連法規
- 民法第540条:契約の解除
- 商法第525条:売買契約の特則
- 下請代金支払遅延等防止法:下請取引における取消し制限
- 建設業法:建設工事契約の解除・変更
法的リスクの管理
- 契約解除権の有無確認
- 違約金・損害賠償の範囲確定
- 相手方の同意取得の必要性
- 関連契約への影響評価
保管期間と管理方法
保管期間
- 契約関連書類:契約終了後5年間
- 損害賠償関連:支払完了後3年間
- 取引記録:最後の取引から5年間
管理方法
- 取消し理由の詳細記録保管
- 損害算定根拠の保管
- 相手方との交渉記録保管
- 代替取引の検討記録保管
損害補償の考え方
補償対象となる損害
- 実際に発生した費用(材料費・人件費等)
- 機会損失(他の受注機会を逸した損害)
- 間接費用(管理費・事務費等)
補償範囲の限定
- 予見可能性の範囲内
- 契約条項による制限
- 相当因果関係のある損害のみ
使用タイミングと注意事項
使用すべきタイミング
✅ 取消し決定後即座:電話連絡後24時間以内 ✅ 製造・作業着手前:できる限り早期の連絡 ✅ 相手方への影響最小化:被害を最小限に抑えるタイミング ✅ 代替案提示可能時:建設的な解決策と併せて
使用を避けるべきケース
❌ 契約違反が明確:法的争点がある場合 ❌ 相手方に重大な損害:法的手続きが必要な場合 ❌ 取消し理由が不正:詐欺的要素がある場合 ❌ 代替手段がない:相手方が受け入れ困難な場合
トラブル防止のためのチェックポイント
- 契約条項の確認
- 解除・変更条項の有無
- 違約金・損害賠償の規定
- 通知方法・期限の確認
- 損害範囲の事前確認
- 既発生費用の算定
- 今後発生予定費用の確認
- 機会損失の範囲確定
- 代替案の検討
- 契約変更による継続可能性
- 部分的な実行可能性
- 将来の取引継続条件
よくある失敗例とその対策
失敗例1:損害補償の範囲不明確
- ❌「適正に補償します」
- ✅「実費○○円および機会損失○○円を補償します」
- 対策:具体的な金額・範囲を明示
失敗例2:取消し理由の責任転嫁
- ❌「お客様の都合により…」
- ✅「弊社の事情により…」
- 対策:自社責任として明確に認識
失敗例3:今後の関係への配慮不足
- ❌「今回はキャンセルします」
- ✅「今後ともお取引をお願いしたく…」
- 対策:長期的な関係維持への配慮
カスタマイズのヒント
契約段階に応じた調整方法
【契約締結前】
- より柔軟な表現
- 相互の理解重視
- 将来的な協力関係構築
【契約締結後・着手前】
- 契約条項の確認必須
- 準備費用の補償検討
- 迅速な代替案提示
【作業進行中】
- 既発生費用の全額補償
- 仕掛品の適切な処理
- 損害の最小化努力
取消し理由に応じた対応
【経営判断による取消し】
- 戦略変更の客観的説明
- 計画的な損害補償
- 将来的な取引可能性示唆
【資金的理由による取消し】
- 正直な状況説明
- 支払い可能な範囲での補償
- 回復後の取引再開約束
【仕様変更による取消し】
- 技術的な変更理由説明
- 新仕様での再発注可能性
- 開発継続の選択肢提示
業界特性に応じた配慮
【製造業】
- 生産計画への影響最小化
- 材料・部品の有効活用
- 技術的な代替案提示
【建設業】
- 工期への影響考慮
- 下請業者への影響配慮
- 関連工事との調整
【IT業】
- 開発リソースの有効活用
- 技術的資産の活用方法
- フェーズ別の対応検討
重要な最終チェックポイント
発送前の最終確認
- 法的リスクの確認
- 契約解除権の存在確認
- 損害賠償責任の範囲確認
- 関連法規の遵守確認
- 補償内容の妥当性
- 損害算定の正確性
- 支払能力との整合性
- 相手方の納得可能性
- 今後の関係への配慮
- 長期的な取引関係への影響
- 業界内での評判への影響
- 代替案の実現可能性
テンプレート書式なので必要に応じて文章を変更してご利用ください。
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